ダーウィンが現代の進化論の元となった「種の起源」を発表した1859年当時、実は信じ難いことですが、生命の「自然発生説」は、科学者の間でも必ずしも全面的に否定されておらず、糞尿からウジがわき、塵埃からノミなどがわくと信じられていました。台所の生ゴミ、腐った肉、スープ、それに古いブラシの毛を混ぜておけば、ハツカネズミが「自然発生」すると信じる多くの生命の錬金術師さえいたということです。

(1822~95)
しかし「種の起源」発表の2年後、フランスのドール生まれの生化学者で細菌学者のルイ・パスツールが「細菌を種として導入しない限り細菌は培養液そのものから自然発生しない」ことを実験によって証明しました。この時点で生物が物質から発生するという自然発生説は完全に否定されたのです。
ところが植物学の専門家である東京大学名誉教授岩槻邦男博士は2003年12月3日付の朝日新聞(夕刊)で次のようなことを述べています。
「・・・17世紀の頃までは腐った肉にウジ虫がわくように、生物は親がいなくても自然に発生することがあると思われていました。ところがフランスの科学者パスツールは、実験によって『生命は自然に発生しない』ということを証明しました。地球上の最初の生物がどのようにして現われたかには幾つかの説がありますが、その最初の生物の生命が今まで続いており、その生物から別の生命が生まれてきました。最初のバクテリヤのような生物が発生してから、今まで約38億年かかっています。・・・」
この先生の言っている事の中には重大な間違いがあります。その前半で生命は自然発生しないということが事実であることを認めているのに、その後の発言の中では、「幾つかの説がありますが」とお茶を濁しつつ生物が自然に発生したと語っているのです。これは明らかな矛盾です。
このような矛盾を平気でそれも主要な新聞で語るようなことは大変無責任なことではないでしょうか。生命が物質からわいて出、それが偶然の積み重ねで進化して人間になったというような間違った考えを、あの東大の教授が言っているのだから間違いないだろうといって読者が鵜呑みにしてしまったらいったいどうなるのでしょうか。
行き着くところ、「どうせ人間は偶然の産物なのだから人生に目的など無い、だから・・・」という考えになってしまうのです。このようなところには動物的な生き方を肯定する弱肉強食の考え、生命軽視の思想しか出てこないのです。そしてそれが現代のあらゆる悲劇を生み出しているのです。
