人文科学において「歴史」の研究は確かに重要ですが、科学において「地質学」はそれが地球自体を扱うものであるだけに、同様に重要です。その両者が組み合わされた「地質歴史学」は、地球の起源と成り立ちの謎を解読するものとして、多くの人の興味を駆り立てています。
あるものの起源に関する説には必ず思想的・信条的傾向がつきまとい、そこには意味や目的といったことに関する思い込みが伴うものです。 確かに地質学は文字どおりの科学であって、私達が自然法則を理解し適用するために多大の貢献をしてきました。しかし地質学者が、地質歴史学者になりたがるとき、彼らは科学者よりも、思想家になってしまうのです。
地質歴史学において現在定説となっているのは進化論的「斉一説」です。それは過去の事象は、現在進行しているのと同じように経過してきたのであり、いまだかつて大激変は起こったことがないと言う見解です。この「斉一説」を唱えたのはチャールズ・ライエル(1797~1875)でした。彼はヨーロッパ各地やアメリカを調査し、様々な地形の変化を観察して「地質原論」を著しました。また地層に含まれている貝の化石から現存する種と絶滅した種の割合を調べることで、地質年代区分を提唱したのも彼です。
しかし、それは一種の信仰以外の何ものでもありません。もし地質運動の速度が常に今日のようなものであり続けたとする仮説に立つならば、確かに地球の年齢が非常に古いと言うことになるでしょう。地質プロセスの年代計算にはたくさんの方法があります。放射性同位元素崩壊度測定、大陸浸食、峡谷形成、三角州堆積、海洋ナトリウム増減測定、・・・。しかし、そのような均一なプロセススピードを仮定する科学的根拠は存在しません。流水が土壌や岩を浸食し、放射性元素が減衰するといったことが不可逆性のプロセスをたどると推測することは熱力学の第二法則に則していて正しいのですが、だからといって地質運動の進行スピードが常にゆるやかで一定であったとする保証は何もありません。
先にあげたような方法の何一つとして決定的に地層の年代を特定できるものはありません。そのような科学法則は存在しないのです。そのような崩壊過程は非常に複雑に入り組んでいて、実に多くの要素が関わっているので、実験上確認された諸条件が正確に分かっているのでない限り、速度を正確に割り出すことは永久に不可能なのです。

